軽ドライバーの温故知新


現在の軽貨物運送業の多彩な働き方(荷主との直接請負契約やギグワーク、マッチングアプリ等による自由度の高い仕事)は、15年ほど前にはちょっと想像もつかなかったのではないでしょうか?

個人事業主の比率が高い軽運送業の世界においては、荷主から末端の軽ドライバーに至るまでの多層構造が確立されており、ほぼほぼ働き方を個人が自由に選択できるようなものではありませんでした。

 

昔から荷主と大手運送会社はガッチリと結びついており、大手運送会社にぶら下がっている「元請け」と呼ばれる手配師的な中間搾取業者(大抵は法人成りしている事業主)に荷物が割り振られ、多くの軽ドライバーは元請けと請負契約を締結してそれぞれの条件の下で働くスタイルが一般的でした。

軽貨物初心者であっても自分で仕事を探す手間が省けるメリットは大きいのですが、その対価として手数料という形で売上げから10%~20%程度を納めることになる。
例えば月に30万円分の売上げがあったならば、そこから3万~6万を引いた額が手元に残る感じ。

月30万円の売上げってどんなものかというと、1日8時間程度の日給15,000円の仕事だと20日で達成。
配達単価150円の宅配だと、1ヵ月で2,000個配達完了すれば達成。これも1日100個なら20日で達成。
売上げ30万円という数字は実は軽貨物の仕事では余裕でクリアできることが多い。
サラリーマンの額面月給30万円と比較しても、私は逆に軽貨物の方が楽に稼げる働き方だと思いました。

ただし手数料だけではなく、様々な経費が軽貨物という働き方に乗っかってくるため、売上げ30万円程度では家庭持ちの者では生活が成り立たないでしょう。
ガソリン代・車両&貨物保険・駐車場代・メンテナンス・社保等、手数料と併せて軽く10万円以上が飛んでいきます。
更に車のローンやリース代等が加われば・・・

軽貨物売上げ30万円なら普通に時給1,000円程度のアルバイトをしていた方が良いとも思えます。
アルバイトだってフルタイムで入れば社保は付けてくれるはず。特段経費もかからないから手元に残るお金は、下手に軽貨物運送業を営むよりかは多くなったりする。

ここまでは「稼げない」「仕事が無い」と言われていた昔ながらの軽貨物の話。

この10年間で様々な業界で変化がありましたけど、中でも軽貨物の世界は大きく変わってきました。
先に述べたように中間搾取する業者を飛び越えて、個人が直接大手運送会社や荷主と契約できる形が広まってきたため余計な手数料がかからないとか、ネット通販の隆盛で荷量が豊富でありヤル気さえあれば「稼げる」仕事になってきています。

それでも宅配などは仕事としては拘束時間も長く激務であり、なかなか軽ドライバーの成り手を見つけるのが大変。
そこで労働を自由に選択できる単発のギグワークが登場し、仕事をするしないの選択権をドライバー側に与えるという画期的な変化がありました。

イメージとして長時間労働・キツイというのが定番の運送業に「好きな時に好きなだけ働けます」という一種の働き方改革。
これは現役のドライバ―のみならず、フリーターや低賃金の非正規の者に非常に魅力的に映りました。

特にAmazonが個人とダイレクトに契約を始めた「AmazonFlex」は、当初は時給換算で2,000円と結構インパクトがあり、短期間で募集枠が埋まるほどの大人気。
これが全国にエリアを拡大して軽貨物の働き方にいろいろなスタイルが生まれていきます。

そしてウーバーイーツや出前館といったフードデリバリーというジャンルも成長し、軽貨物だけでなくバイクや自転車での配送仕事が市民権を得て、今や一番話題性のある仕事になっています。
ただし急成長する仕事にはそれなりに副作用が伴う・・・

法に疎いにわかドライバーの急増であちこちでトラブルが発生し、働き方の話題性が変な方向へ移っている。
一部のだらしない者のおかげで配達員全体のイメージが損なわれてきている。
ドライバ―職をベースに真面目に営んでいる者とすれば、やり切れない思いもあるでしょう。

結局新しい働き方のようで、その根底にあるのは稼ぐためには数をこなさなければならないという労働者への「煽り」が存在するのは昔から変わらない。
運送仕事の闇の部分ですね。

表面上のシステム・働き方が変わったように見えて、低単価で数多く運ばせるという事業者側の魂胆は変わらない。
一見、自由度の高い働き方に思えるが、実際はアカウント停止という恐怖をちらつかせて拘束してしまう。
「好きな時に好きなだけ」という理想的な働き方はなかなか難しい。

 

こういう運送仕事の闇の部分を知っていることで、新たなサービス・働き方が出てきた時に冷静に観察することができる。
最初は甘い汁を吸わせ、ドライバーの頭数が揃ってきたら本性をむき出しにしてくるのがこの世界。
いつまでも理想的に働ける仕事はないもんですなぁ。

にわかドライバー達は運送仕事の歴史的な部分も背景も知らずに参入する人がほとんどでしょうから、しばらくすると「あれ?」みたいな部分が増えてくると思います。
彼らにとっての「あれ?」は現役ドライバーにとっての「やっぱりね」ということか。

本質が変わるには一朝一夕とはいきません。
配送仕事の今昔を少なからず学び、新しい働き方は一体何を意味してどこへ向かわせようとしているのかを推測してみましょう。
「故きを温ねて新しきを知る」ことは軽貨物だけでなくいろいろな仕事においても同じ。
その下準備があるだけでも失敗を防ぐことに繋がっていくでしょう。

単に上っ面の収入や働き方に騙されず、先を読む力を身に付けましょう!

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