〜「ねばならない」を手放した老後の希望〜

未来のイメージがブレない人といつも雲行きが怪しい人の違いは?

60歳を過ぎた自分の未来をイメージできますか?

10代の時に想像した自分の未来
20代の時に想像した自分の未来
30代の時に想像した自分の未来
40代の時に想像した自分の未来
50代の時に想像した自分の未来

ブレずに人生、歩んでいますか?
それともブレまくって制御不能な状態になっていませんか?

私の場合は40代を過ぎて最初の転職をした辺りから未来がブレ始め、50代手前で雇われる世界から個人事業主として軽貨物ドライバーとなったことで未来は完全に不透明になってしまいました。
そこから60歳を超えてドライバーを引退するまでの15年間、ブレた未来を修正すべくもがきあがいた経験を仮物語にしてみました。

持病や体力低下、収入不安など様々な悩みを抱えて年齢を重ね、このままで良いのだろうかと葛藤している軽ドライバーの方もいらっしゃるでしょう。
そんな不透明な未来を少しでも修正していくためのヒントになれば幸いです。

はじめに:60歳の坂道と、重すぎる「最後の荷物」

登り続けるだけの働き方ではなく、どこかで振り返るべきだった

人生には、誰もが立ち止まらざるを得ない坂道がある。

軽貨物運送業一筋、59歳の慎吾にとって、その坂道は突然、彼の「鉄の馬」=愛用の軽トラ のタイヤが空回りするかのように、眼前に立ちはだかった。

重い荷物を積み込み、高速道路を走り抜け、時間に追われる毎日。
30年間、彼の背中には「家族を養う」「自分の力で稼ぎ切る」という、目に見えない、しかしとてつもなく重い「ねばならない」という名の積み荷が常に載っていた。

だが、60歳を目前にした今、その積み荷の重さは、腰の激痛と急激な体力低下となって、ついに彼の体を軋ませた。
医者の宣告は彼の心臓を冷えさせた。「しばらく、安静に」

動けない体。止まったエンジン。そして、目を背けてきた国民年金という老後の現実。

「俺の人生、このまま終わるのか?」「これまで、体を壊してまで積み上げたものは、結局、この不安を解消してはくれないのか?」

人生のカーブを曲がりきれない焦燥感と、未来への暗雲が、慎吾の心を締め付ける。
これは、かつて彼と同じように、「体力の限界と、老後資金の不安」という二つの崖に挟まれた、あなた自身の物語かもしれない。


 

第一章:30年間、「鉄の馬」と共に背負い続けた「ねばならない」

「ねばならない」働き方にどこかで気付かなければいけなかった

慎吾の仕事は、時間との戦いだった。

夜明け前のひんやりとした空気の中、積み込み場に響くフォークリフトの音。彼の右腕は、何百、何千という段ボールと、汗と、そして責任の重さを記憶している。
軽トラの荷台は、常に「家族の生活」という名のミッションで満載だった。

「稼がねばならない。」 「体力の限界を認めるわけにはいかない。」

それが、彼を突き動かす唯一の燃料だった。
信号待ちのわずかな時間でさえ、彼は配送ルートのシミュレーションをし、一秒でも早く次の目的地へたどり着くことだけを考えていた。
彼にとって、「働くこと=自分自身の価値」そのものだった。

しかしその価値観は、彼の体を無視し続けた。

特にここ数年、腰に走る鋭い痛みは、もはや湿布や痛み止めではごまかせなくなっていた。
ある夕暮れ、荷物を降ろす際に膝が笑い、崩れ落ちそうになった瞬間、「ああ、もう無理だ」という冷たい現実が慎吾の背筋を駆け上がった。

彼は自分の人生の価値を、「運べる荷物の量」「通帳の数字」という、極めて物質的で残酷な物差しで測り続けてきたのだ。
そして今、その物差しが彼を「価値のない存在」と断定しようとしていた。


 

第二章:止まったエンジンと、「空っぽの軽トラ」が教えてくれたこと

自分の生かし方、お前の使い方をもっと考えれば良かったなぁ

医者に言われ、強制的に休業に入った慎吾。

毎日、彼の目に入るのは、家の隅に寂しそうに停められた「空っぽの軽トラ」だった。
エンジンは止まり、荷台はがらんどう。
彼の人生そのものが、急に無価値になってしまったように感じた。

走れない。稼げない。つまり、存在価値がない

深い絶望の中、慎吾は初めて自分の手帳に書き殴っていた配送ルートのメモや給油の記録ではなく、空を見上げ、道端の草花に目をやった。
彼がいつも高速で通り過ぎていた、誰も気に留めない日常の景色。

ある日、空の軽トラを磨いていると、ふと気づいた。

「俺は、この『鉄の馬』と一体化しすぎていたのかもしれない」

軽トラには、積み荷が必要だ。
だが、慎吾という人間には、本当に「稼がねばならない」という積み荷しか必要なかったのだろうか?

焦燥感と不安が渦巻く日々の中、彼は近所を散歩するようになった。
そこで、小さな町の古びた商店「みやもと商店」のおばあちゃんに出会う。
おばあちゃんは、慎吾の顔を見て「あら、いつもあの小さなトラックで頑張っていた子だね」と声をかけてくれた。

「あんたは、いつも正確に時間通りに荷物を届けてくれるから、安心だったよ。あんたの顔を見ると、ホッとしたんだ」

その言葉は、慎吾の体に染み込んだ「疲労」とは違う、温かい何かを心に届けた。
それは、通帳の数字でも荷物の重さでもなく、「信頼」という名の見えない積み荷。


 

第三章:「荷降ろし」の決断:肩書きと資金を「資産」から外す勇気

前へ進むには苦しい決断を覚悟すべし。ここを避けては通れない

みやもと商店のおばあちゃんの言葉をきっかけに、慎吾の心の中で「革命的な荷降ろし」が始まった。

彼は決意した。まず、人生を縛ってきた「ねばならない」という重荷を手放そう。

  • 「常に稼ぎ続けねばならない」 → 「無理せず、体と心の声を聞きながら、誰かの『ありがとう』を集めよう
  • 「存在価値は肩書きと資金で決まる」 → 「自分の『知識』『経験』という、誰にも奪えない宝物を見つけよう」

ある午後、慎吾はおばあちゃんに「荷降ろし」の相談をした。

「おばあちゃん、この辺りの配送ルート、どうにかならないかな。あの道は渋滞しやすいし、ちょっと工夫すれば、もっと楽になるはずなんだけど…」

長年、この地域を縦横無尽に走り回ってきた慎吾の頭の中には、地域の地理、時間帯ごとの交通の流れ、効率的な荷降ろし場所の完璧な地図が描かれていた。
それは、彼の人生の「知恵」という名の積み荷だ。

お金になるわけではない。
しかし、慎吾は数日かけて、おばあちゃんのために「みやもと商店専用の、地域密着型ミニマム配送ルート改善案」を作成し、手渡した。

「すごいね!あんた、本当にこの仕事のプロだね!この地図、お金じゃ買えないよ!」

おばあちゃんの弾けるような笑顔と、心からの感謝の言葉が、慎吾の魂を震わせた。

この瞬間、彼は確信したのだ。

俺の存在価値は、まだ「荷物」を運べるか否かだけではない。
 俺の価値は、この体内に蓄積された「知識」と「知恵」にある。


 

おわりに:「最高の資産」は、あなたが歩んできた「轍(わだち)」の中にある

あなたの歩んできた後には必ず未来に参考になる轍が残る

慎吾は、古い軽トラを「稼ぐための道具」から「地域を笑顔にする相棒」へと変えた。

彼は体力に応じて週に数時間だけ、地域の高齢者の「ちょっとした運搬・雑用請負人」として軽トラを走らせ始めた。
灯油を運ぶ。粗大ゴミの運び出しを手伝う。病院の送迎ルートをアドバイスする。

かつてのように「効率的に、稼がねばならない」ではなく、「誰かの『ありがとう』を集める」ために。
報酬はわずかでも、その「ありがとう」が、彼の心を満たし、老後への不安を少しずつ溶かしていった。

【あなたへのメッセージ】

人生の終着点が見え始め、老後資金や体力の不安に苛まれているあなたへ。

あなたが長年、額に汗して歩んできた道は決して間違いではありませんでした。
その道は、あなたという人間を形作る「知恵」「信頼」という、誰にも奪えない最高の資産を生み出していたのです。

国民年金は少なくても、この「見えない資産」があれば、老後を豊かに暮らせる道は必ずあります。

あなたの知識を、誰かの助けに変えてください。 あなたの経験を、地域の安心に変えてください。

さあ、「ねばならない」という重荷を降ろしましょう。
あなたの人生は、「終活」の始まりではなく、「輝きの第二章」の出発点なのですから。
あなたの
「轍(わだち)」は、これから先を照らす道標となるでしょう。

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