肌感坊

坊は大人以上に鋭いのだよ

動物や人間には「五感」と呼ばれる感覚機能があることをご存じだと思います。
目・耳・鼻・口・皮膚の5つの器官で感じる、それぞれ視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚(皮膚感覚)を総じて「五感」と呼び、それ以外の何か理屈では説明できないようなインスピレーション的な感覚を「第六感」と呼んだりしています。
「直感」「霊感」「虫の知らせ」などはよく聞く言葉ではないでしょうか。

ただ先天的な障害や事故や病気等で後天的に感覚を失うこともあり、また感覚機能にも個人差があり必ずしも平等に備わっているわけではありません。
子供の頃、偉人伝をいくつか読んだこともあると思いますが、その中で必ず紹介されるのが「ヘレン・ケラー」。

努力を超えた努力は奇跡の扉をこじ開ける

彼女は1歳9ヵ月の時に高熱の病気で視覚と聴覚を失う。聴覚を失ったことで言葉も話すことが出来なくなりました。
私たちはいつの間にか喋ることが出来るようになっていますけど、それは耳から聞いた言葉を脳が復習し、目で相手の口や動作を見よう見真似できるから成せる業であるのです。
多くの大人が英語が上達しないのはこの辺にヒントがありそうですけれど・・・

「見えない、聞こえない、話せない」という三重苦を背負うことがどれだけ厳しいか。
自分に置き換えてみれば、いや想像しただけで生きていくことすら絶望的になるでしょう。
しかし彼女はその困難を受け入れ打ち勝った。しかもその後の人生を障害者の福祉活動に捧げるという、まさに偉人伝に相応しい人物なのです。
それに比べ私利私欲に走る健常者の私たちは一体・・・

炎の料理人 量・タイミングは教わるな!体で覚えろ!

職業によって「五感」の使いどころが違いますよね。
例えば「食」を生業として活躍される方は「味覚」と「嗅覚」は一般の方より鋭いはず。
「元祖〇〇」などという看板で商売されている料理人や酒蔵の責任者などはもう職人の域にある。

スープをちょっと舐めただけで何が足りないのか、酒の匂いを嗅いだだけで銘柄を当てるとか、これは生まれつきの能力というより長年の修行や努力によりある程度鍛え磨かれた結果取得した感覚でしょう。
ということは「どうせ俺は凡人だ」って投げやりの人にも何かの感覚を極められる可能性はあるということ。

ドライバー職は料理人のような突出した感覚は必要ないにせよ、「視力」や「聴力」は運転業務には大事な部分。
しかし残念ながら加齢とともに「視力」「聴力」とも衰えていく。
免許取得や更新で面倒にも視力・聴力の検査があるのは、この感覚機能が運転において非常に重要だから。
それに加えて「判断力」もですけれど。

ワシはいたって健康。悪くない。車が悪いんじゃ!

昨日は97歳が運転する車が人身事故を起こしたと大きく報道されていました。
高齢者の事故はもう珍しくもないですが、平均寿命を大きく超えた”高齢者過ぎる”人の運転には驚きです。
歩道に乗り上げ歩行者をはね、そこから更に車三台に衝突とか、視力・聴力・判断力などという常識の通用しない世界のお話ですね。

私は50歳目前で軽貨物運送業を始めたわけですが、一般的に考えれば「五感」はもう下降線に入っているはず。
今のところ「聴力」の衰えは検査や日常生活を含めて感じません。それどころか「視力」は会社員時代より少し良くなっている。
会社員時代は読書量が多くパソコンに向かっている時間も長かったということもあって、学生時代は視力1.2だったものが軽貨物始める寸前には視力0.3にまで落ちていた。

軽貨物始めて最初の免許更新時には視力検査の結果「眼鏡使用」の条件が付けられました。
実際夕方からは標識の文字も読めないぐらいで、むしろ積極的に眼鏡を使って運転してました。
ところが何故かここ数年は視力が0.8程度に回復し、夕方でも標識の文字ぐらいは認識できます。
これは自然に鍛え抜かれ(慣れ?)た結果なのか?

肌で感じられるようになれば生きるのが楽になる

「臭覚」「味覚」は若いころから変わりありません。
コロナに感染すると多くの人が「臭覚」「味覚」に影響が出たという報告がありましたが、陽性反応もなかったし「臭覚」「味覚」も変化なし。
料理人が徐々に研ぎ澄まされていくように「臭覚」「味覚」は年齢とはあまり関係ないのかもしれませんね。

一番変わったと感じたのは「肌感」だと思います。
もともと「五感」というのは外の世界の情報や危険を察知するために備わっているわけですが、会社員時代には肌で何かを感じるという記憶があまりありません。
もちろん暑い寒い痛いはありましたけど(笑)

つまり会社員時代には会社に守られているという無意識な安心感が「五感」を緩ませていたのかも。
それが独立することで全身をアンテナにする必要に迫られたことで、「視力」も「肌感」も覚醒した?
軽貨物運送業という職種が危険を感じさせているのかもしれませんが・・・

頭使わないと長時間労働低賃金の世界だぜ!

実際運送業の外の世界から来た者には特有のヤバさを感じるはずです。
ここに鈍感な者は搾取され人生を変な方向に持っていかれることになるのです。
私は幸い肌感覚でヤバい部分を察知できたので上手く距離感取ってやれてますが。

でも軽ドライバーという働き方は近くに上司や同僚がいることもなく、自分の意識に集中できる環境があります。
自然の風景や街の景色、人々の服装等に季節を感じ、1日の時間の流れも時計を見ることなく知ることができる。

会社員時代には景色と言えばオフィスや地下鉄内の印象が強く、1年中スーツ姿と制服OLばかり見ているし、定時まであと何時間みたいな社畜特有の時間間隔の中にいた。
これでは「五感」も退化するわけだ。

同じ景色、同じストレス、これが貴方のなりたかった姿?

会社員時代と独立後のギャップが間違いなく人間としての本能を呼び覚ましている。
意識して感覚を磨いているわけではないが、自然と外の情報・危険を察知しようと全身が研ぎ澄まされていく感じはある。
しかし残念ながら独立・フリーランスの全員が「五感」が磨かれていくわけではない。

中には社畜みたいな働き方をして心身とも束縛されてしまっている状態の人はいる。
これでは例え「何か」を察知しても自分の意志は行動に反映されない。
理不尽・危険と察知しても何も出来ないなら、もう「五感」は反応しなくなる。
ある意味で自分自身の中で「狼少年」状態となっている。

せっかく備わっているはずの「五感」なのですから、いろいろと活用したいものです。
世界TOP企業のGAFAMですらいきなり従業員の半分以上をリストラをするという衝撃。
もう働いていれば安心とは言えない社会情勢なのですから流れに身を任せているだけでは危ない。

何かを察知したらどう行動する?

普段の生活の中で肌で感じる「何か」というのは結構当たることがある。
それは冒頭で述べた「第六感」もそう。突然ゾクゾクしたり鳥肌が立ったりとシグナルが表れたりする。
そのシグナルを見逃さないこと、そのシグナルが何を意味するのかを理解すること。

ただ「五感」「六感」が発動するだけではダメで、そこから何をするかに意味がある。
会社員のように自分の意志で何も変えられない状況では人間の本能は退化する。
ただでさえ加齢で低下していく能力なのに、退化でそれを加速させては悲しい。

人間は生まれた時は皆「はだかんぼう」で平等です。
当て字するなら「裸ん坊」となりますが、大人になってからは「肌感坊」を突き詰めないと。
頼れるのは自分の感性。肌で感じる「何か」は赤の他人より信用できるはず。いや、信用できないと。

人は生まれてから死ぬまで「はだかんぼう」なのですから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です