軽貨物にも法の規制が伸びてきた

自由気ままな軽貨物という生活は無くなる運命にある

参入の容易さから様々な人々が軽貨物運送業に流入してきている昨今ですが、それゆえにハンドルを握る仕事をするにあたり不適格な者も増えてきています。
これまでの軽貨物事業者(個人事業主を含む)には安全管理者を置く必要はありませんでしたが、あまりにも軽貨物事業者による事故や違反件数が増加してきたため、ようやく国土交通省は重い腰を上げました。
誰でも参入できる仕事ゆえ、運転マナーや一般常識に欠ける者が多ければ軽貨物事業者全体がコンプライアンス意識が低いと認識されてしまう。
規制が強化・義務化されるのは必然の流れでしょう。

軽貨物安全管理者制度の導入と個人事業主への影響
貨物自動車運送事業法の改正に伴い、新たに軽貨物事業者にも「軽貨物安全管理者制度」の導入が実施されます。
この制度は軽貨物運送事業の安全性向上を目的としたもので、これまで規制が緩かった個人事業主の軽貨物ドライバーにも大きな影響が出ることが予想されます。
下の図からわかるように事業用貨物自動車の事故件数は、軽貨物以外は年々件数が減っているのに対して軽貨物自動車においては増加を続けています。
2016年と2021年での比較では件数は26.3%も増え、死亡・重症事故は83.4%も増えています。
ここでは制度の概要と個人事業主への影響について解説します。

国土交通省 貨物軽自動車運送事業適正化協議会資料から

■軽貨物安全管理者制度の概要
軽貨物安全管理者制度とは、軽貨物運送事業者に対して安全管理体制の構築と安全管理者の選任を義務付ける制度です。
軽貨物運送事業者とはわかりやすい例ではAmazon宅配におけるデリバリープロバイダーやトラック以外でも軽貨物を扱う大手運送会社、また以前は数多くいた下請けの軽ドライバーを仕切る中間搾取者などがあげられます。
厳密には1人だけの個人事業主にも安全管理者制度が適用されるようです。
具体的な内容は以下の通りです。

1人個人事業主軽貨物ドライバーにも規制がかかります

1. 安全管理体制の構築
事業者は安全管理規程の作成事故防止対策の実施など、一定の安全管理体制を構築する必要があります。
事故の未然防止や、事故発生時の対応体制の整備が求められます。
もし事故が発生した場合、事故の概要・原因・再発防止対策を記録し、3年間は記録を保管しておかなくてはなりません。
また、大きな事故を起こしたり行政処分を受けた時にはすみやかに報告し、情報は国土交通省のホームページ上に公表されます。
これまでのように内々に有耶無耶にできなくなるため、管理責任は一層重くなります。

2. 安全管理者の選任
事業者は安全管理業務を統括する「安全管理者」を選任しなければなりません。
1人個人事業主ドライバーは当面は本人が行うが、やがては専任者を置かねばならなくなるかも。
安全管理者(1人個人事業主ドライバー含む)には一定の資格要件が設けられる予定です。
具体的な要件としては2年以上の軽貨物運転経験や、安全運転に関する講習の受講などが考えられます。
軽貨物運転歴が2年に満たない者は、別途安全管理者を置かないと事業ができない?

これまで気楽だった軽ドライバーもそうはいかなくなるぞ!

3. 安全管理者の業務
安全管理者には、ドライバーの適性確認や運転管理、事故防止対策の立案・実施など事業者の安全管理に関する業務が課されます。
事業者の安全管理体制を適切に機能させるための中心的な役割を担うことになります。
安全管理者は管理者講習の受講が義務付けられ、2年毎の定期講習を受ける必要があります。

4. 監査・指導の実施
国土交通省は事業者の安全管理体制を定期的に監査し、必要に応じて指導を行う予定です。
安全管理体制が不十分な場合には、事業者登録の取り消しなどの行政処分の対象となります。
もしかしたら「トラックGメン」みたいな組織が発足し、軽貨物を監視することになるのでしょうか?

5.参入ハードルの引き上げ
これまでは普通自動車運転免許証があれば誰でも軽貨物の仕事に参入できましたが、新たな新制度が導入されればそれも叶わなくなるかもしれません。
業務開始の際の初認診断が実施される予定です。これは軽貨物ドライバーを始めたとき、またはドライバーを採用したときになります。過去に診断を受けていない者も該当します。
事故を起こした時には改めて適性診断が行われます。
65歳以上のドライバーには、3年ごとに適齢診断と同等の受診が必要になります。
適時ドライバーにフィルターをかけることで事故の発生を防ごうという狙いがあります。

個人事業主の責任もかなり重くなる。そろそろ辞め時か?

■個人事業主への影響
この軽貨物安全管理者制度の導入により、個人事業主の軽貨物ドライバーには以下のような影響が考えられます。

1. 初期投資の増加
事業者に求められる安全管理体制の構築には一定の初期投資が必要となります。
安全管理規程の作成や事故防止対策の導入など、事業者には多額の費用負担が生じる可能性があります。

2. 安全管理者の選任と業務負担
個人事業主には、安全管理者の選任とその業務遂行が求められます。
2年以上の運転経験と安全運転講習の受講など、一定の要件を満たす人材を確保する必要があります。
また、ドライバーの適性確認や事故防止対策の立案など新たな業務が発生します。

3. 事業継続の困難化
安全管理体制の構築や安全管理者の選任など、個人事業主にとっては大きな負担となります。
特に小規模な事業者では、これらの対応が難しくなる可能性があります。
安全管理者への報酬を払ってまで事業を存続する者がどれだけいるのだろうか?
事業の継続が困難になる事態も危惧されます。

4. 収支悪化への影響
安全管理に関わる費用の増加や安全管理者の人件費など、個人事業主の収支悪化につながる要因が多数発生します。
収益性の低下を招き、事業の存続に関わる重大な問題となる可能性があります。
ただでさえ人手不足の業界・職種なのに、事業者ごとに安全管理者など選任できるのだろうか?
また、数少ない管理者を引き抜くために報酬の引き上げ合戦も予想されますよね。

自己管理に厳しくできなければ軽貨物を続けて行くのは無理!

以上のように、軽貨物安全管理者制度の導入は、個人事業主の軽貨物ドライバーにとって大きな影響が予想されます。
事業者登録制度の導入に加え、さらなる規制強化により事業継続が困難になる事態も懸念されます。

個人事業主はこの制度の詳細を早期に把握し、安全管理体制の構築や安全管理者の選任など、具体的な対応策を検討する必要がありそうです。
また、収支悪化への対策として、業務の効率化や料金設定の見直しなども検討すべきでしょう。

今回の新規制は安易に軽貨物運送業を始めることへの参入障壁となりそうですし、適性診断を導入することで不適格者の洗い出しにも寄与しそうです。
事業継続へのハードルも上がることから事業者やドライバーの撤退も増えそうです。
特にフードデリバリーやギグワーク、Amazon等の軽貨物で完全フリーで活動している者にとっては制度を順守することは面倒この上ないでしょう。

おそらく法を順守しない・できない者は後を絶たず、国から事業停止処分等の鉄槌を下され運送業からの強制退場を余儀なくされる未来が見えてきている。
これまで自由を追求し軽貨物の世界に参入してきた者にとっては、規制で縛られていく仕事は魅力的に映るだろうか?
そのうちバイクや自転車でのフーデリの仕事にも厳しい規制がかかっていくことでしょう。

結局ルールを守れなければ住み心地はどんどん悪くなるだけなんですよね。

目先の快楽に溺れて自らの環境を腐敗させていくのを 自業自得 と呼ぶのだろう。

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