至急、請負契約内容を確認せよ!

責任ばかり押し付けやがって!弁償なんてできねぇよ!

東へ西へと進路がブレブレの台風10号が今週日本列島のどこかに上陸する見込みです。
初めてドライバー職として台風を経験する者にとっては、その恐怖がどんなものか理解できないかもしれません。
目の前でトラックが横転し、突風でハンドルは取られ片方のタイヤが浮き、いつの間にか冠水した道路に嵌り身動きが取れなくなる・・・
毎日のように過去の台風災害映像が流されていますが、実際に上記のような事態に巻き込まれても不思議ではない。

台風災害が発生した際、個人事業主としての軽貨物宅配ドライバーが被る損害は多岐にわたります。以下にいくつかの具体例と、それに伴う最悪の損害賠償の可能性について説明します。

台風はトラックも簡単に横転させるが、ケガは自己責任?

1. 車両の横転や破損

事例: 台風による強風で車両が横転したり、飛来物で車両が破損する。

損害: 車両の修理費用、または全損の場合の車両の買い替え費用。

損害賠償責任:

  • 車両保険: ドライバーが車両保険に加入している場合、保険がカバーすることがあります。ただし、台風などの自然災害は保険の適用外となる場合もあるため、保険内容を確認する必要があります。
  • 自腹負担: 保険が適用されない場合、ドライバーは全額自費で修理または買い替えを行わなければならないし、修理終了や車両入手までは仕事ができないことも。

2. 荷物の損害

事例: 車両が横転した際や道路の増水・河川の氾濫で荷物が水没する、または損傷する。

損害: 配送中の荷物の破損や紛失に伴う損害賠償。

損害賠償責任:

  • 荷物損害保険: 一部の宅配ドライバーは荷物の損害に対する保険に加入していることがあります。この場合、保険が損害の一部または全額をカバーすることがあります。
  • ドライバーの責任: 貨物保険に加入していない場合、または保険でカバーされない範囲の損害が発生した場合、荷物の所有者(顧客や荷主)に対して損害賠償を求められる可能性があります。

文化財に突っ込んだりしたら保険でカバーできないかも・・・

3. 事故による第三者への損害

事例: 突風で車両が制御不能になり、他の車両や歩行者に衝突する。

損害: 第三者の車両修理費、医療費、または人身事故に伴う賠償金。

損害賠償責任:

  • 自動車賠償責任保険(自賠責保険): これは法律で義務付けられている保険です。ただし、補償範囲に限界があるため高額な損害が発生した場合は全額をカバーできないことがあります。
  • 任意保険: 任意の自動車保険に加入している場合は、保険の内容によってはより広範な損害をカバーできる可能性があります。

4. 仕事の中断と収入の減少

事例: 台風の影響で配送業務が一時的に中断する。

損害: 配送できないことによる収入の損失。

損害賠償責任:

  • 収入補償保険: 災害時の収入減少に備えて収入補償保険に加入している場合、保険が一定の収入を補償することがあります。
  • 自腹負担: 保険に加入していない場合、収入減少の影響はすべてドライバー自身が負担しなければなりません。

台風なのに無理させるから荷物もドライバーも失ったんだ!

最悪の損害賠償のケース

最悪のシナリオは、複数の損害が同時に発生する場合です。例えば、強風で車両が横転し、車両の修理費や買い替え費用が発生し、同時に荷物が水没して損害賠償責任を負い、さらに第三者に対する人身事故が発生して高額な賠償金が求められるケースです。このような状況では、保険でカバーされない部分についてはすべてドライバーが自己負担することになり、最悪の場合、事業を続けることが困難になる可能性もあります。

損害賠償責任の所在

請負契約内容において「自然災害における荷物等の損害賠償責任」について明記されておらず、事前に契約先と確認していなかった場合、損害賠償責任が発生するかどうかは、いくつかの要素に依存します。

「とにかく出発しろ!」「嫌だ、誰が責任取るんだよ!」

1. 契約の明確性と業務請負の性質

業務請負契約は、請負人(この場合、個人事業主の軽貨物宅配ドライバー)が特定の仕事を完成させることを目的とする契約です。契約に自然災害に関する損害賠償の責任が明記されていない場合、契約に基づく明示的な責任は発生しないと主張できる可能性があります。しかし、契約に具体的な免責条項がない限り、荷物の安全に対する責任が全くないとするのは難しい場合もあります。

2. 民法上の注意義務

日本の民法に基づくと、請負契約では請負人は「善管注意義務」(善良なる管理者の注意義務)を負うとされています。これは、業務を遂行するにあたって一般的に求められる注意義務を果たす必要があるということです。しかし、台風や自然災害のような不可抗力の事態においては、「善管注意義務」を果たしていた場合でも、損害賠償責任を免れることができる可能性があります。

台風時に走れば車両は相当痛む。日当考えたら割に合わない

3. 自然災害における責任の所在

自然災害は「不可抗力」とみなされることが多いため、自然災害によって発生した損害については、基本的には請負人が責任を負わないことが一般的です。契約先が台風などの自然災害による損害について請負人に高額な損害賠償を求める場合、請負人は「不可抗力」であることを主張して、賠償責任を免れることを試みることができます。

4. 実務上のリスク

しかし、実務上は以下のようなリスクも考慮する必要があります。

  • 契約先の立場: 契約先(荷主)がその請求を法的に主張し、裁判を起こした場合には、裁判所の判断に依存することになります。裁判所は契約内容、請負人の注意義務、不可抗力の範囲などを総合的に判断します。
  • 交渉の余地: 請負人と契約先との間で交渉が行われ、責任分担や損害賠償額の調整がなされることがありますが、裁判までして勝訴したところで契約先を失うのは必至でしょう。

5. 予防策

このような事態を防ぐために、以下の予防策を講じることが重要です。

  • 契約書の確認・修正: 契約書を作成する際には、自然災害や不可抗力に関する責任の所在を明確にしておくことが重要です。免責条項を設けることで、予期せぬトラブルを防ぐことができます。
  • 保険加入: 荷物の損害に対する保険に加入することで、万が一の際の損害賠償をカバーすることが可能です。

最初に誰がどう責任取るのか決めとこうじゃねぇか!

結論

契約に自然災害に関する免責条項がなく、事前に確認もしていなかった場合、契約先から損害賠償を求められるリスクはあります。しかし、「不可抗力」として責任を免れる可能性もあるため、契約内容や状況に応じて適切に対応することが求められます。法的な助言を求めることも検討すべきです。

軽貨物に参入してくるドライバーの多くが見落としがちなのが、業務における「責任の所在」です。
報酬や労働時間等は気にするでしょうけれど、例えば「休む時・辞める時は代理のドライバーを立てるのか?」ぐらいは確認しておきましょう。
そして一番重要なのはまさに自然災害に遭遇してしまった場合です。
冠水した道路に嵌り荷物を水没させたり車両が横転して荷物を破損させてしまったら・・・

これは台風だけでなく地震の時もそう。車両を放置して現場から逃げなければならない時、ルールとしてはロックせずにキーを車内に残していく。
当然車内の荷物の盗難の可能性もあるし、火災に巻き込まれたり倒壊した建物の下敷きになることもある。
命からがら逃げてきたら仕事や荷物の責任を負わされるとか、そこまでして卑屈にしがみ付きたい仕事ですか?

下手すれば年収以上の損害賠償責任を負う可能性のある働き方です。
いきがって多くの荷物を積んで出発した先で災害に遭遇すれば、荷物の数だけ賠償の可能性が増えるかもしれません。

さあ、今すぐ請負内容を確認してから出発しましょう!

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