中間搾取がなければ運送業も悪くない
15年も軽貨物運送業をやっていると、一通りこの世界の仕組みや良い部分・悪い部分が見えてきます。
それでも軽貨物の世界に入ってきたばかりのような、初々しい時代もありました。
当時は仕事の内容も報酬も提示されたものが普通に当たり前だと思っていましたけど、今では疑ってかかるべきものだったなと思うようになりました。
例えば宅配の仕事(一度もやったことありませんが)の場合だったら、いろいろな求人を見ても配達単価制がほとんどで、単価としては1個配完して160円前後。
その根拠なんて深く考えなかった。だってどの求人見たってほぼ同じような条件だったし、宅配の仕事ってそういうものだと信じて深読みする見識も当時は無かった。
自分が本業としていた商業貨物便についても、日収制ということと労働時間が短いことが宅配との大きな違い。報酬と労働時間の宅配との違いは単に個人向けか法人向けかの差ということだと思っておりました。
実際法人向けの配送が短時間で終わる理由は、配送時間が配達先の営業時間内に限られる(9時前後~17or18時)のと、一度に数十個の荷物を同じ配達先で落とせる、多くがリピートの配送先であり地図不要で不在再配達がなく慣れればお昼で終わることも当たり前のようになり、配送効率が良いというのはやってみて実感した。
仕事を選ぶにあたって1日いくら稼げるかという基準で見る人も多いと思いますが、日収制の場合はほぼわかる。
午前中で終わろうと18時過ぎまでかかろうと報酬は同じ。
だから月収は稼働日の数で決まるので上限は限定的だが管理はしやすい。
宅配は日によって配達数も違うしかなりの日収差が出たりする。ガソリン代等の経費も日によってだいぶ変わるので、求人だけ見ても稼げるのか否かはわかり辛い部分はある。
ただし稼げる可能性というのは、単純に売上だけで見れば宅配に軍配が上がる。
おおよその稼ぎの比較(日収)
商業貨物(日収固定)・・・18,000円~20,000円
宅配(配達個数単価)・・・@160円×150個=24,000円
おおよその稼ぎの比較(月収)
商業貨物(月稼働22日)・・・396,000円~440,000円
宅配(月稼働数25日)・・・600,000円
商業貨物便の稼働日が少ないのは、配達先法人が完全週休2日制のところが多いことによる。
特に年末年始やお盆、ゴールデンウィーク等には月の稼働日は20日を割り込んだりするので、年で均して22日としてみた。
宅配は個人宛の荷物が殆どで年間を通してカレンダーに影響されず、稼働日数はやる気があれば多くなる。
配達数1日/150個というのは閑散期繁忙期も含めての年平均数としてあくまでも目安としての数字。
1日の配達数が150以上なら収入もそれなりに増えていくし、稼げる可能性だけ考えれば軽貨物の仕事の中ではトップクラス。
もちろん請負先によって単価は変わるし、安定した仕事量が保証されているわけではない。
この数字はあくまでも私個人が身近に見てきたことを参照にしているということで見て欲しい。
売上での単純な比較では宅配の圧勝のように見えるが、軽貨物の仕事で注意したいのは「売上が増えるほど経費も増えていく」ということ。
稼ぐということは車にもそれなりに負担をかけているということで、ガソリン代やオイル交換の頻度、タイヤ・ブレーキパッドの消耗等メンテナンス費用も嵩んでいくことを見落としてはいけないのです。
本当に比較したいのは実際いくら手元に残るのかということ。
これはどの仕事においても同じですけどね。
経費の部分には求人広告上で触れていることはほぼ無いし、一見景気の良い情報発信している軽貨物系ユーチューバーでも表立って触れていることは少ない。
そこから経費引いたらいくら残るんだよっ?とツッコミどころは満載である。
「月収50~60万以上は楽勝だぜぇ!」と売上数字でイキっているのはあながち理解できないでもないが、その程度の稼ぎで得意げになるのは単にその見た目の数字が普通のサラリーマンより多いと思うからなのか?
「俺ってこんなに稼げるんだぜぇ!」という承認欲求の強さが出てしまうのか?
非正規が正規より稼げるぜぇという悲しい優越感を誇示するなら、それはちょっと恥ずかしい。
今の世の中ではドライバー仕事のように長時間労働せずとも、月に100万200万稼いでいる者はいくらでもいる。20代の若者だって汗水垂らさなくても月収3桁万円稼ぐことが珍しくない世の中になっちゃってますから。
だから私は私なりに売上数字を誇るより働き方で差別化できないかと考えました。
見た目に数十万円稼げる程度のコテコテの運送業より「走らないドライバー」というコンセプトで、労働対価重視でドライバー職に固執しないドライバーという新たなジャンルを切り開こうとしているのです。
邪道だなんだと言われても(笑)
そういう開き直ったものの見方をするようになってから、ようやく運送業の世界を俯瞰して見れるようになりました。
なぜ運送業が過酷労働仕事なのに末端のドライバーは低賃金で働かされているのか?
運送業全体の多重構造にその理由の一つがあることは間違いないでしょう。
これ建築・建設業も同様の問題を抱えています。
大元の仕事の出どころから実際に仕事に携わっている現場まで一体何社が関わっているのか?
例えば宅配の仕事一つとっても、大手運送会社から外部の委託先に仕事が降りて来る間に中抜きのシステムがあったりする。
〇〇パートナー管理部門みたいな。
そこから外注管理専門みたいな総元請けがあって、そこにぶら下がっている中小の元請けがあってようやく一般の個人事業主ドライバーに仕事が降りて来る。
当然それまでの工程で何度も中間搾取されているので末端のドライバーは低単価で働かされる。
どの仕事も同様な構造になるので末端価格は同じ水準になる。逆に言えば末端価格が先に決まってそこから中間搾取する金額が決まっていくとも言えましょう。
こういう仕組みの中で1日十数時間働かされて「〇〇万円稼げたぁ!」と自慢し合っていることの器の小ささよ。
本当はもっと高単価で仕事を請けれるはずなのに、そこを追求せずあくまでも長時間労働低賃金で働かされる中でマウントを取り合っていても仕方がないではないか。
働き方や報酬を理想に近づけるなら、直に請け負うことができる荷主と繋がることだと思うのです。
私がメインの軽運送の仕事を捨て、サブであった軽運送を残したのもまさに荷主と直に繋がっていた仕事だったから。
インボイス免除はたまたまでしたが、かなりの好条件・高単価の案件をやらせて頂いている。
たまにお伝えしていますけど時給換算で7,000円~1万円以上になる仕事。
普通ならあり得ないと思われるかもしれませんが、荷主直であり中間搾取が全くないとこういう案件は結構多くなるのではないかと。
もしこの仕事に2~3の中間搾取者が入ったら、私の請負金額は時給換算で3,000円~5,000円以下にもなり得る。
時給3,000円程度なら宅配レベルになってしまう。
逆に言えば中間搾取を減らせば宅配の配達単価も@300円程度になっても不思議ではなくなる。
それぐらい軽貨物の世界には大きな問題点があるのです。
今の報酬には余計な搾取される要素が満ち溢れているという目で上流まで観察してみてください。
その搾取を潰すことができたなら、軽貨物という仕事は会社員以上の魅力になるのではないでしょうか?