残業代に頼る働き方にサヨナラしよう

そしてドライバーは誰もいなくなった・・・

運送業界への非難の声があちこちから聞こえてきます。
メディアが毎日のように「2024年問題」を取り上げていますが、そもそもこの問題は5年前から課せられていた宿題だったはず。
しかし宿題提出まで残り1年を切っているのに、いまだに多くの運送会社では課題解決の糸口すら見えてこない。
いや、答えはわかっているのに回答用紙に書けないのです。
書いたら最後、自らの存在を否定するようなものだから。

そもそも労働者の時間外労働の上限規制を設けることが、働き方改革法案としての骨子であったはず。
何も運送業界だけの話では無くて、多くの業界に課せられた宿題。
一般的には「労働時間は原則1日8時間、1週に40時間まで」というのは多くのサラリーマンがイメージする労働時間。
これに36協定だ特別条項だと特例を認めた上での時間外労働は年間720時間まで(休日労働含まず)とされています。

やることは無くても帰り辛いから残業ってダメでしょ!

ざっくり言えば月平均60時間の残業は一般職種では認められる(あくまでも月に均した時間であり、いろいろと細かいルールがあるのだが)。
月60時間の残業だって結構多いように思うのだがいかがだろう?
週休2日制としても1日平均3時間近く残業するって当たり前ですか?

ところが運送業においては時間外労働の上限規制の施行時期は5年の猶予を与えられた。
その間に何とかしなさい!と言われていたにもかかわらず、あっと言う間に4年の歳月は流れたが事態は良い方向に進んでいるどころか年々悪化しているように見える。

運送業の時間外労働は年間960時間(休日労働を含まず)と、一般的な職種の1.3倍ほど甘く設定されている。
月に均せば80時間の残業。1日平均なら4時間近く働かされてもルールの範囲だと。
一般的サラリーマンに置き換えれば毎日が9時~21時みたいな労働。しかもこれだけ働いても運送業の賃金って一般的職種より2割ほど安い。

トラックドライバーなどは残業しまくってようやく普通のサラリーマン並みの収入になるかどうか。
だから時間外労働時間の上限規制などされたら生活が立ち行かなくなると騒いでいる。
運送仕事に従事する労働者だけでなく、会社自体も法に触れるほど従業員を働かせないと会社が回らないというどうしようもないビジネスモデル。

これはもう時間外労働とかではなく、運送業の仕組み自体がおかしいので2024年問題で解決できるものではない。
だから施行が迫っても頭の中では答えはわかっているが、それを実行した瞬間に会社は飛び従業員は路頭に迷うから皆がどうにもできないまま時間だけがいたずらに過ぎてしまった。

ラストワンマイルは海上輸送では難しい が、誰の手も借りたい

私も運送業界に身を置く者として間近に運送会社やトラックドライバーを見ているが、年々魅力的には感じない職業になっているなぁと強く思う。
大体好んで残業をやりたがる仕事って何?
そもそも残業しなければ食って行けない仕事って給与体系がおかしくない?

トラックドライバーって決して楽な仕事ではないですよ。
いつ家に帰ってるの?みたいな人ばかりだし、ただでさえ事故のリスクを背負って道交法だの車内ドラレコ監視だの毎日デジタコ提出だのとストレスだらけ。
慢性的な睡眠不足と腰痛や関節痛等の持病を抱え、手積み手降ろし長い荷待ち時間とか決して普通のサラリーマンにひけをとらない働き方しているのに、何で労働時間が長くても給料が安いのか?

2024年問題で残業が削られて収入が減る・生活が苦しいと騒ぐ前に、残業しないと生活できない働き方に疑問を持たないと。
もっと隣の芝生の青さをしっかり見るべきではないのかなぁ。
「俺はドライバーしかできねぇんだよ!」といつまで自虐的に自己否定しているんだろう。
従業員が「ドライバ―しかできねぇ!」「残業しなきゃ生きていけねぇ!」という思い込みから抜け出さないと、会社もいつまでたっても体質は変わらない。

タダで付帯作業させる荷主の仕事は請けてはいけません!

先日、2023年度の下請法上の重点立ち入り業種として、「道路貨物運送業」など5業種が公正取引委員会から選定された。
多層構造の業種で上下関係等による「買い叩き」が問題視されたことによる。
労働時間もメチャクチャだし適正価格もあって無いようなものだし、こんな危ういことが横行している業界に長時間働かされて低賃金でもしがみつく必要があるのだろうか?と思ってしまう。

他に行くところがない、何のスキルもない、と動かないのも自由だが、会社がコケたらそんな悠長なこと言ってられない。
それぐらい今の運送業界はヤバいと思う。
ふと周りを見れば愛想をつかして他職に就いた者も出てきたりしてませんか?
この状況で新たにドライバーになりたいなんて変わった人は入ってきていますか?

ヤマト運輸がサービスの品質を保持するために、6月から一部のエリアで宅配便の到着予定日をこれまでより1日遅らせることを発表し始まってますね。
あのヤマトでさえこれまで通りの仕組みを維持することが困難になってきているということ。
ドライバ―不足と2024年問題が影響しているのは間違いない。

ドライバーのありがたみがわかってからでは遅い!

ドライバ―という仕事に魅力があれば人手不足というのは大きなチャンスとなるはずなのに、一向に不足が解消しないどころかますます人手不足が深刻になるというのは何を意味するか?
何か政府がやろうとしていることは現場をわかっていないし、トラック協会もあいかわらず役に立たないし、従業員の不満は「残業しなくても暮らせる給料にしろ」ではなくて、「残業時間の上限を撤廃してたくさん残業させろ」みたいな変な怒りになっている。

第三者から見れば「残業青天井にしなければ食って行けない」ではなく、「残業しなくても普通に食えるだけの報酬体系にしろ」となぜ思わないのか不思議・・・
初めに残業ありきの仕事では人は来ない。ドライバーも一つの選択肢と思わせる待遇とそれを可能にする仕組みを国も業界も企業も真剣に考えないと。

残業時間を減らされて文句を言うおかしな働き方が蔓延している現状を何とかしないと、2024年問題はエンドレスになってしまう。
ドライバーがいなくなれば労働時間も何もあったものではない。
来年の今頃、日本の物流はどうなっているのだろう・・・

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