CMは鵜呑みにできない

何をもって安定した収入を保証するのだ?偽り広告か?
「デリプロは配達個数に関係なく、安定した収入を保証します!」
こんな笑劇・・・いや衝撃的なCMが堂々と流れていることを知っていましたか?
トラック、軽貨物、一般営業車を使用する者は大抵車内でラジオを聞くことも多いので、このCMを聞いたことがあるのではないか?
私はラジオでしか聞いたことがない(そもそもテレビは見ない)のだが、実際にデリバリープロバイダの仕事をされている、もしくはしたことがあるドライバーさん達はこのCMをどう感じているのだろう?
デリプロのラジオのCMではいくつかのパターンがあるのですが、まず実際にドライバーをされている方(本物?)が配送上の問題点や不満を肉声で語ります。
例えば時間指定しているのに不在する受取人や何回再配達しても配完できなければ売上にカウントされない等。
その後でナレーターが「ドライバーさんが安心して仕事に取り組めるようウンタラカンタラ」の企業努力的なアピールが続き、最後に冒頭のメッセージでCMが締めくくられます。

AIにとって配達員は人間もロボットも関係なく無慈悲に扱う
デリプロと言えば、AmazonFlexのようなAmazonとドライバーの直の請負ではなく、間に元請けをかますAmazonに特化した配送形態。
直請けと元請けの下で働くのとどちらが良いかの議論は絶えません。
という世界観がもはやすっかり定着しておりますが、肝心なAmazonの配送という仕事のイメージがとにかく数をこなせ!みたいな感じであまりよろしくないし、デリプロのイメージも一時期はドライバーの品質が最悪で運送の世界を知るものほど冒頭のCMが滑稽に思えるのではないでしょうか?
Amazonの配送と言えば、なまじAIに管理させているせいかドライバー個々の能力に関係なく効率重視で荷量を割り振ってくるので、ドライバーの負担は相当なものになっている。
例えば途中の配達員の休憩など考慮しないし渋滞などの時間ロスもお構いなし。
私は個人的にはアプリに管理されて配送ルート等が思うようにならないことこそ非効率的と思っているので、稼げるかもしれないが面白くないAmazon宅配の仕事はやりません。

ピンの位置が正しいとは限らない。住宅地図は正確無比
昔からドライバー職をやっている人は住宅地図の方が検索しやすいし、何よりエリアの地図・地形が頭に入っているのでいちいちアプリを確認せずとも配送順やルートは伝票見ればすぐに頭の中に組み上がる。
もし配達仕事をこれからやろうと思っているのであれば、エリア固定で出来る仕事を選ぶことをおススメする。
少しは配達仕事が面白いと感じることができるのではないだろうか?
さてCMの話題に話を戻しますが、今回のデリプロの微妙な広告内容は下手すればJARO(日本広告審査機構)の出番になりかねない危うさがある。
JAROの仕事は「消費者の広告・表示相談を受付け、審査・適正化に努める」というものでJARO自身の広告CMもある。
「ウソ」「過大表示」「まぎらわしい」等の一般消費者に影響・被害を与えそうな広告に関して、一般消費者からの意見・苦情も取り扱うため、何でもクレームのご時世ではその頻度は年々増しているようだ。
ただしJAROはあくまでも自主規制を促す団体であり、強制的に広告を止めたり訂正させる等の権限はない。ただ個人でギャーギヤ―騒ぐよりは行政や業界に訴える力はある。
なぜデリプロのCMがJAROの出番を予感させるかについては、まさに「ウソ」「過大表示」「まぎらわしい」が当てはまりそう。

無限の配達地獄で個数に関係なく収入が安定する根拠は?
「配達個数に関係なく安定した収入」
まさか運送の仕事でこれを言うか?と驚いちゃいますよね。
2024年問題を意識してドライバー人口を増やそうという意図もあるのでしょうけれど、運送業界の安定した収入っていったいいくら?
「月収20万円」と言われても驚きませんよ。だってトラックドライバーなら残業少なければそれぐらいの人は珍しくないですから。
軽の宅配の場合は個人事業でもあり月収20万円は毎月保証されても安定した収入と思えるのだろうか?
例えば1日の配達数が70個だとして、配達単価150円で月に20日稼働すれば21万円。
Amazonの仕事で1日70個なんて楽チンもいいところですが、このレベルで良しとするならば「配達個数に関係なく」という表現は間違いではない。
私が広告表現上どうなのかなと思うのは、Amazonの配送なら1日150~200個は今や普通になりつつある中で
デリプロが何をもって安定した収入と定義付けているのかわからんが、未配が多かったり配達能力が周囲より劣ったりすれば即アカバン喰らったり契約解除になるケースがある中で、「配達個数に関係なく安定」という表現は誤解を招く恐れが大きいと思う。

Amazonの配達仕事のイメージをいかに変えていけるか?
仕事を失えば安定した収入などあったものではない。
にもかかわらずドライバーの能力・キャパを超えるノルマを課して出来なければ契約打ち切りというのは、「配達個数に関係なく安定した収入を保証」というCMは、誰かがJAROもしくは国や行政に訴えても何ら不思議ではないと思うのです。
広告を正すなら「配達個数を気にせず安心して仕事を続けられます。頑張り次第では月収50万円以上も決して無理ではありません!」ぐらいなら、「オッ、やってみようか」という人も出てくるのでは?
AmazonやデリプロのイメージとCMの内容に違和感がありすぎるのが問題なんです。
CM流す前にYouTube等でもっと仕事や働き方のイメージを高める方が先では?
今回ご紹介したのがラジオCMだからまだ反響がそれほど広がらずに済んでいるのかも。
これテレビでやったら視聴者はもっと多いだろうし何より目と耳から同時に入ってくる情報はダイレクトに脳に刺さるのでわかりやすくクレーマーの餌食になりやすい。
ラジオの場合は聴覚のみの情報なので一旦脳内で整理・理解する必要がある。
CMの情景をすぐに思い浮かべることが出来ず、何を意味しているかを判断できなければ情報は聞き流されて終わる。
クレーマーが盛り上がる以前に情報が脳内に留まらないことは、広告側としては良いのか悪いのか。
広告は相手に刺されば勝ちとされる。
例えそれがモラルや常識に触れそうなものであっても、話題になれば広告をやった効果はあると言える。
何も反響が無いよりはよっぽどマシというのが広告の世界。
そういう意味では際どく攻めているデリプロはお行儀の良い広告よりは成功なのかも。
ただしそれが求人に結びつくかは企業や働き方に問題がありすぎるが。
個人的にもう一つ気になるラジオCMがある。
一時期盛り上がった「過払い金」の問題で相変わらず弁護士や税理士が市民に訴求している、「過払い金の疑いを調べてみませんか?」「調査は無料」というようなもの。
一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

過払い金戻っても出費グセが治らなければ被害者は金融側?
私が違和感を感じるのは、CMの中で「過払い金請求してみたら数十万円のお金が戻ってきました。このお金で主人と旅行を計画しています!」という内容のもの。
「目の前にお金があるとすぐに支出したくなる体質だから、やたらカード使って過払い金が発生する事態になってるんじゃねーの?」とツッコミたくなりません?
過払い金返還いいねぇ!自分は何を買おうかなぁ?と同調する人はヤバいズラ。
まあ過払い金ビジネスはトラックドライバーの訴訟ビジネスと並んで士業の方にとっては貴重な収入源ですから、広告打ってまで追う価値はあるのでしょう。
ボーっと見聞き流している広告もそれぞれに深読みしてみると面白くなる。
広告側の意図、見る側の捉え方、広告効果・・・
いかにドロドロした思惑が広告に潜んでいるかを読み取れないと、単なるカモネギになるだけですよん!