薄利多売と多売薄利、ドライバー仕事が労働対価が低い理由
週末も朝早くから宅配ドライバーの方々が走り回っております。
配達数をこなさなければ稼ぎにならないビジネスモデルとは言え、暑い日も寒い日も雨の日も、毎日長時間労働を続けることは容易いことではありません。
同業者としても頭が下がる思いでございます。
配達の仕事は「大変そうだ」と思われますが、特に猛暑の中や大雪・台風といった劣悪な気象条件下では「大変」どころか命の危険すら感じることがあります。
夏場はドライバーが熱中症で倒れることは日常茶飯事であり、大雪では配達中に車が制御不能になったり台風では横転することも珍しくはないのです。
よく悪条件での配送を「仕事に対する使命感」と綺麗事を並べる運送会社がありますが、仕事の使命と従業員の人命を理解していないのだろうなと思ってしまいます。
そんな経営者の下で安い給料で働かされているドライバーの何と多いことか。
いつの頃からかドライバー職は低賃金の仕事というイメージが定着しました。
恐らく規制緩和で運送会社が激増し、価格競争が起きて自分たちの首を絞めあう醜い業界になったからでしょう。
荷主側からすれば運送会社が仕事欲しさに運賃を勝手に下げ合って競争してくれているのだから、こんな楽な商売はない。
運賃どころか付帯作業までやらせてくれと頭下げてくるのだから笑いが止まらないでしょう。
こうなると殿様商売。図に乗って弱者の足元を見て好き放題無理難題を吹っ掛ける慣習が荷主に根付いてしまい、運送仕事は稼げないビジネスモデルとなって今日に至る。
会社を回すために長時間労働や積載超過、速度超過等の違反行為が後を絶たず、年々厳しくなる労働法や道交法の壁に業務停止命令や倒産・廃業となる運送会社が毎年けっこうな数になっている。
法を順守すれば会社が回らないというビジネスモデル。
消えていく会社が多い一方で新規に会社起こして参入してくる者も多い。
何故か?
それは仕事の量だけは豊富にあるから。
古い体質で組織や待遇に融通が利かない会社は存続できない運命にあるが、最初から組織をスリム化して低運賃前提でスタートできる場合はチャンスと考えるのでしょう。
廃業する会社の社屋や車両を居抜きのように利用できれば開業費用は抑えられるし、経営センスに長けている者が展開すれば生き残れる可能性はある。
ただし、基本的には運賃は新規参入社が他と同じというわけにはいかない。荷主にとってのよほどのアドバンテージを提示できなければ、仕事すら得られないこともあるでしょう。
そんな状況ですからいかに経営センスがあっても、いや、経営センスがあるからこそドライバーの賃金を抑えてでも会社存続の方向を優先に運営するはず。
どう考えても本気で稼ぎたい労働者の夢が叶うとは思えない世界。
普通、たくさん仕入れれば単価が安くなるのが仕入れる側のスケールメリットですよね?
しかし運送会社の場合、運ぶ荷物をたくさん請ければ運賃単価も安くなるのは請ける側のスケールメリットと呼べますか?
人手も足りないのに目先の売上の数字を増やそうと荷物をキャパ以上に請けてしまうから、違法行為に繋がっていくんです。
これで法を順守したら仕事をさばけないし会社が回るわけがない。
そのしわ寄せが来るのが末端のドライバーです。
安い賃金で労働対価に見合わない量を運ばされる。
敬遠されがちなドライバー職も何故か一定数の応募はある。
事故歴・違反歴がなければ中高年でも大抵は採用されるという、仕事にありつけるハードルの低さ。
しかし辞めていく者も多い。特に他業種から応募してきた者ほど短期間で辞めていく。
肉体的な辛さもありますが、労働量に見合った収入にならないというのも大きな理由。
会社のビジネスモデルが安くたくさん請けて見せかけの売上げを作るのが基本ですから、少なくても従業員に満足な報酬を回せないことを理解した上で応募してこないから働けない。
「薄利多売」と「多売薄利」の違いを知ろう!
会社としては「薄利多売」を承知した上でのビジネス展開をしているのです。
一方ドライバーは多大な労働力を提供している割に実入りが少ないと感じる。
多くのドライバーはこの「多売薄利」で働かされていることがわかっていない。
戦略的な会社の「薄利多売」と、勉強不足なドライバーがこき使われている「多売薄利」の状況。
言い換えれば会社の思うツボに働かされているんです。
会社が「薄利多売」ビジネスが出来るのも、労働者が「多売薄利」の状況をわかっていないから。
宅配で配達数を競わせたりウーバーイーツでゲーム要素を取り入れたりして、ユーチューバーを動画ネタ・宣伝媒体に誘導しているから今は配達仕事の参加者が増えています。
ただ報酬内容や働き方を観察してみると一生の仕事として続けていくのはどうかなぁと感じてしまう。
恐らく今は新鮮味を感じてひたむきに配達している彼ら彼女らも、他にもっと効率よく稼げる働き方や先進的なビジネスが出てきたら簡単に乗り換えるだろうなぁと。
薄利多売ビジネスを多売薄利でしていることに気付かない方が、ある意味労働者としては幸せなのかもしれない・・・