軽運送業はワーキングプアなのか?
「稼げない」と言われている軽運送業。しかし最近にわかに脚光を浴びているのはなぜか?
これまでの運送業特有の「長時間労働」「2か月先の入金」といった悪いイメージを一新したアマゾンフレックスという働き方の登場が、中高年だけでなく若者に注目されたことが大きい。
いくつもある軽運送業の仕事の中では「宅配」が世間の軽運送業のイメージだと思います。
と同時に宅配の報酬システムも1個配って百数十円の世界と考えられています。実際配達個数単価制の仕事が圧倒的に多いです。しかも「配達完了しないとカウントされない&不在が多い」という厄介な部分がマスコミで多く取り上げられたこともあって、稼げるイメージが湧かないのも無理はないですね。
数をこなさないと収入にならない = 数をこなすには時間がかかる = 長時間労働
軽運送業で月に50万以上稼いでいる人はそこそこいるのですが、やはり完全週休2日制で定時上がりのサラリーマンとは労働時間には大きな差があります。
サラリーマンは定時過ぎて働けば残業代が確実に(サービス残業させる会社でなければ)付きます。何時間働けばどれだけ収入が増えるかというのがある程度計算できますよね?仕事してもしなくても(笑)
ところが完全出来高制の宅配仕事の場合、まず残業という概念がありません。一定の収入に到達するには一定の数を配達完了しなくてはならないのですが、定時・残業という線引きがないため労働がエンドレスになりがちです。個人差も大きくある人は12時間で200個配達できる人もいれば100個も配達できない人もいます。
前回もちょこっと書きましたけど、労働対価・時給換算して最低時給に満たない働き方になる人が多いのです。例え1日15,000円稼いだとしてもそれに14時間もかかってしまえば、もはや個人事業主というそれっぽい響きではなくなってきます。この収入をそれなりに作るには長時間労働になるというワーキングプア的なイメージが軽運送業にはあったのですね。
ところがアマゾンフレックスは収入と労働時間が単純明快。支払いは毎週です。しかも宅配と同じ金額を稼ぐのに労働時間は少なくて済む。宅配のベテランとアマゾンフレックス初心者が同じ日当・月収を稼ぐことを可能にしている点が、それまで軽運送業に興味がなかった者にも大きく心を動かす要因になっています。関東圏の募集が殺到してあっと言う間に締め切られた(現在はまた再開されているようですが)ことに表れています。
この新興勢力・新しい働き方が何を意味してるのかというと、これまでの軽運送業のあり方はやはり旧態依然で魅力のないものだということを証明した。今ある求人にしても結局は長い労働時間を前提に「月収40万円も可能!」みたいな釣りコピーで人を集めようとしているわけですが、既に働き方の中身は多くの人に見透かされているので人が集まらない。「可能!」ではなく労働時間と収入を「確約!」にしないといつまでも胡散臭い運送業のイメージは断ち切れない。アマゾンフレックスは「確約!」にしたから人が集まったのです。
巷に溢れる軽運送業の求人広告にふらふらと吸い寄せられて迂闊に始めてしまうと、工夫も無いままに続けていればワーキングプアに陥る可能性は高いと思います。それは先に述べてきたように収入を作るために時間がかかりすぎるという致命的な欠点を見落として、結果的に1日15,000円稼げたことに安堵してしまうこと。
軽運送業の特色としては走れば走るほど経費も増えていきます。経費は労働時間に比例すると言ってもよい。時間をかければかけるほど収入における経費の割合も増えていきます。ここの部分を工夫しないとワーキングプアになってしまいます。
だから14時間働いて15,000円稼ぐより、軽運送業では8時間働いて10,000円でいいから副業で4時間5,000円みたいな合わせ技を考えていった方が、お金と時間のバランスを調整していくのに役立つはずです。バカ正直に長時間拘束されて軽運送業しか視界に入らないような働き方で収入に限界を感じているのであれば、本業の収入・労働時間を減らして他の収入ネタに時間を投下していった方が自分を取り戻せると思うのです。
単なる配達ロボットになっていては可能性も何も広がりません。
ドライバーというのは仮の姿。名を捨てて実を取ることを意識してみてはいかがでしょうか?
ただし今の労働時間・収入に納得しているのならこの限りではありません。
ワーキングプアを続けているというのは誰のせいにもできません。
ワーキングプアを多数作りそこで利をむさぼっている者は確実に存在します。自分が利用されていることを意識しているのならそこから抜け出す工夫・努力をしなければ、その待遇に同意しているようなもの。
軽運送業は求人のままに働けばワーキングプアになるかもしれないし、自分なりの働き方を実践していけばワーキングプアは回避できます。今そこにある働き方は相手が商売するためのセットです。そこをいかに自分の商売に結びつけていけるか、相手を利用することを考えられるか。
もう個人事業主なのですから、相手に雇われるという感覚で働いてはいけません!