個人事業主の葬儀は面倒?残された家族はどうなる?
10月に入って以前から病気療養中であった妻のお父様の容態が急変し、帰らぬ人となってしまいました。
昨日・本日で通夜・告別式と慌ただしく行い、悲しい時間を過ごしております。
中高年世代にとっては高齢者の親には誰にでも起こりうる避けられない現実ですね。
妻のお父様は大工の棟梁をされておりました。
ここ数年はさすがに現場からは遠ざかっておりましたが、腕一本で子供3人を育て上げてきた職人肌のお父様です。
いわゆる「一人親方」という個人事業主として自らも営業し、得た仕事・現場で大工を集めて建築施工・リフォーム等を行っておりました。
私がもし何かの事業に成功して妻のお父様に自分の家を建ててもらうという、妄想・サクセスストーリーは残念ながらもう叶いません。
しかしお父様の生き様は私がサラリーマンを辞める時の心の拠り所でもありました。
さて、過去に様々な葬儀に参列してきましたが多くは会社員時代の出来事であり、故人とは会社の同僚とか取引先関係という第三者的な立場での参列がほとんど。
そのような葬儀では人の繋がりも血縁だけではなく、故人だけでなく残された者の仕事や人脈という複雑な関係が絡んできて参列者や献花・弔電の数が相当な数になってきます。
参列者も百人を超えるような規模となることも珍しくなく、会場や日程の調整も苦労したりします。
今回の妻のお父様の場合、一人親方という個人の事業主の立場。
大工の棟梁とは言え、下で働く大工も個人の集合体。
現場ごとにメンバーが変わったり、施主も一期一会のようなもの。
よほど長い付き合いにならないと冠婚葬祭に関係する間柄にはならないでしょう。
このように個人で商売していると長いお付き合いになるケースはサラリーマンとはだいぶ違ってきます。
これは軽貨物の仕事にも相通ずる部分がありますね。
荷物の受取人とプライベートで繋がるというのはなかなかないですよね。
ただ荷主と直に繋がっていたり元請けが面倒見が良い人であれば、冠婚葬祭に絡んでくるお付き合いになることはあります。
お父様は東北出身の方で親類も東北にお住いの方も多いのです。
ただ多くが80歳を超えた高齢者であり、今はコロナの関係で無理して遠方より移動して参列するというリスクは避けたいこともあり、葬儀の参列者はかなり数が絞られていました。
仕事上でも参列された人は少なくやや寂しいお見送りとなってしまいましたが、身内にはコロナの影響者がおらず無事に葬儀を行えたこと自体は良かったと思いました。
葬儀場の方にお話を聞いたのですが、やはりコロナが関係して葬儀を行えなかった件数はかなりあるようです。
逆に陽性反応の人や感染が疑われる人がいた場合は、葬儀の依頼を断るとも。
こうなると故人と1等身の血族でも火葬前後の対面も叶わなくなるため、本当に悲しいお別れとなってしまう。
そう考えるとこれまで普通だった通夜・告別式が行えただけでも今は有難いと思うべきかもしれません。
個人事業主である者の葬儀というのは、よほどの実力者・知名度のある者でなければ規模はこじんまりと行われることが多くなるのは仕方がない。
結婚式もそうですけれど最近は見栄を張らず、コンパクトに行うケースが増えているようです。
少子高齢化の影響はコロナとともに冠婚葬祭にも確実に影響を与えています。
貴方が棺に入る立場になった場合、自分の葬儀に誰が参列しますか?
個人事業主として活動されている方は自分の葬儀を想像してみてください。
家族・親類・仕事関係・友人関係・・・
まあ年齢の部分で参列が可能な人が年々減っていくかもしれませんが、例えば来年早々にもその不幸が訪れてしまったとしたら?
10年後、20年後だったらどうでしょう?
配偶者・子・親兄弟・親戚・知人・それ以外は?
恐らく会社員を経験されていた方にとっては、当時より人の繋がりという点では減っている人が多いのでは?
年賀状の数が冠婚葬祭のバロメーターという分析もあるようですが、葬儀の全体像を自分で考えられるか残された遺族に任せるかによってもだいぶ違ってくるでしょうね。
もちろん家族葬・密葬にするかどうかという点も生存中に決めておくのか、それとも経済的事情も含めた現実的な判断に委ねるのか?
葬儀にかかる費用は大都市圏においては平均200万円前後かかるとも言われています。
ただし結婚式同様に規模・形式によってここの数字は大きく変えられます。
大事なポイントは予め人数を想定できる結婚式に対して、突発的に行わざるをえないケースが多い葬儀は参列する人数は読みづらく、こちらの都合で内容を決めにくいことが多くなります。
それでいて早急に決めなくてはならないことばかりで、ついつい焦って「内容は業者にお任せ」になりがちで費用は遺族の経済状況を超えたものになりがちです。
シビアな話をすれば、参列者が多ければ香典も増えることで式の費用負担を軽減できるかもしれません。その逆で参列者が少ない場合は香典に期待するのは無理。
しかし密葬や家族葬のようにコンパクトに行うことで負担を軽減することは十分可能です。
以上を踏まえると、今の自分の収入や資産である程度自分の葬儀の形が見えてきます。
よほど家族にお金持ちでもいなければ、成功していない個人事業主の葬儀はコンパクトにせざるを得ない。
とにかくもう自分があれこれ口出しすることはできないのですから、普段からさまざまケースを想定して家族とは話し合っておくべきです。
生前の自分の収入は今後家族には入りません。
残された家族に負担がかからないようにするには、個人事業の収入を含めた全体像を家族に伝えておきましょう。
会社員のように企業遺族年金や見舞金などが無いことは、個人事業主のデメリットでもあるわけですから。
形式的なイベントは終わりましたけど、本当に大変なのはこれからの相続や遺品整理と残されたお母様の面倒を誰が見るのかとか、身内内でのゴタゴタが起きないことを祈るばかりです。
個人事業主の一番のデメリットとしては、残された家族の大変さがあるのではないか?
僧侶の読経を聞きながら、不謹慎ですがふとそんなことが頭をよぎっておりました。
全ての中高年、いや全ての人は生まれた瞬間から「終活」は始まっているのです。