個人作業主

ドライバーはみんな個人作業主?いいように働かされる
世の中には「個人事業主」という働き方をしている人は何人ぐらいいるのだろう?
令和5年7月に公表された総務省統計局の資料によると、何かしらの仕事をしている有業者のうち本業をフリーランスとしている数は209万人ということです。
有業者に占める割合は3.1%。男性が146万人、女性が63万人ということです。
もちろん軽貨物運送業を営んでいる者もその中に含まれます。
フリーランスは多いと思いましたか?それとも少ないと思いましたか?
男女計の年齢層で見ると一番多いのが「45~49歳」で24.5万人、次に多いのが「50~54歳」で24.4万人とのこと。
本業がフリーランスの割合は50歳前後でピークとなるような感じでしょうか。
また、副業のみフリーランスの割合では「35~39歳」が最も高く、次に「65~69歳」「40~44歳」と続いていきます。
この数字から何が読み取れるのでしょう?
リストラがもはや当たり前のように日本社会にも浸透し、中高年の転職の困難さ故に仕方なくフリーランスに収まってしまったのか?
大卒からフリーランスをやっている人も年々増えてきてはいるようですが、やはり40代~はリストラ絡みが多いのと脱サラして独立自営に舵を切る人も出てくるからでしょう。
軽貨物ドライバーの年齢層から見ても40代~50代がかなり多いので、説得力のある統計資料のように思えます。

フリーランスを選んだ理由は? 総務省統計局資料より
副業のみフリーランスというのはもはや今の日本人の典型的なワークスタイルとも言えそうですね。
何らかの副業をしている人という意味では年齢層がかなり幅広くなるでしょうし、今後はAIを使いこなす若者が副業では収まらず本業に転化してフリーランス人口がどんどん低年齢化していくような気がいたします。
総務省統計局の資料では「本業にフリーランスを選んだ理由」というのも紹介されていて、
- 専門的な技能等を生かせる
- 自分の都合の良い時間に働きたい
- 通勤時間が短くて済む
軽貨物運送業を始めようと思った理由はいかがですか?
一般的なフリーランスを選んだ理由とはちょっと違うみたいですけどね。
専門的な技能を生かすでもないし、通勤時間はAmazonのセンターや大手運送会社に積載に行くことを考えると絶対条件でもなさそう。
唯一一致しそうなイメージが「自分の都合の良い時間に働きたい」でしょうか?
現実は「相手の都合の良いように働かされている」ではありませんか?

こういう個人事業主になっていませんか?
働き方の自由さを求めてフリーランスに流れて来ても、実際に自由を満喫できている人はどれだけいるだろう?
そもそも個人とは言え「事業主」を名乗るのであれば、働き方ぐらいは自分でプランを立て休みも収入も自分でコントロールできて初めて事業と言えるのではなかろうか?
しかし実態は目先の案件欲しさに労働時間も収入も全て相手の支配下に置かれてしまってはいないだろうか?
例えば軽貨物運送業の場合、個人事業主と言ったって多くの軽ドライバーはやっていることが一緒。
皆で物流の歯車化して低単価で配達数を競わされている。
軽貨物はとりあえず宅配!みたいな流れが一般化していて、それが大手運送業の請負なのかAmazonの請負なのかの違いだけみたいな。
実際はギグワークのような単発の案件や商業配送、企業配送、スポット・チャーター等、結構いろいろなジャンルがあり、自転車やバイクでもできるフードデリバリーなどもほぼフリーランス。
これらの働き方の中で胸張って「事業」と呼べるものはどれだけある?
結局はクライアントの方が「事業主」であり、言われるがままの条件で働かされている配達員は単なる「作業主」ではなかろうか?

俺がやりたかったのは作業じゃねぇ!事業なんだ!
建築・建設の世界と同様に運送業の世界も多層構造になっている。
上流ほどしっかり利益を抜いて下に降りてくるほど旨味は少なくなってくる。
軽貨物ドライバーはまさに運送の世界の末端で、残りカスみたいな利益で働かされている。
長時間労働で配達個数を競わされ、それでどうにか見た目の売上数字を作り「稼いだ!」と勘違いする働き方。
それって100%自分が事業として思い込んだ結果なのだろうか?
自分でコントロールできる部分はどこにある?
毎日誰かのルール下で同じ条件で同じことをしているのは「作業」でしょう。
そこに「事業」の要素をどうやって加味していけるの?
フリーランスの問題点ってそこなのではなかろうか?
「個人事業主」というのは聞こえはいいが、実態は「個人作業主」というのが正しいような。
決して自由でもないし安定もしていない。
事業なら少なくても節度ある働き方で安定を手に入れなければ。
まあ作業を続けているとそれが安定と思う人もいるけれど、結局クライアントが「事業主」の立場である限りイニシアチブは相手にあり、相手都合で条件を変えられたり契約を切られたりする弱者の立場なのです。

自分でコントロールできるのが事業。運ばされるのが作業
ではどうする?
- まずは初心に帰って自分の事業とは何ぞや?から見直してみる。
- 「個人事業主」なのに陥りがちな「個人作業主」になってしまっている理由はどこなのか?を洗い出す。
- 自分の強みが商売に反映されているか?弱みが相手に利用されていないか?を確認。
作業することが悪いわけではない。
「事業」が「作業」にすり替わっていることを認識していないことが問題。
なぜ自分の「事業」が相手に搾取されるための「作業」になってしまっているのか?
脱サラしたのは自分の裁量で仕事がしたかったからではないのか?

自分が事業主か作業主か、これでわかったでしょ?
毎月のように言い値で働いてくれる「個人作業主」が湧いて出てくるのだから、運送業の中間搾取者は2024年問題などどこ吹く風でしょう。
雇用するわけでもないし生かさず殺さずという微妙な低賃金で働かせ放題なのだから、こんな旨味は手放すわけにはいかない。
だからいつまで経っても末端の「個人作業主」の待遇は良くならないし、配達スキルなど誇れるものではない。
軽ドライバーの「事業」はどこ行った?
フリーランス・非正規はなぜ弱者と呼ばれるのか?
中には経営のセンスがあって企画・提案・営業までこなして「事業」として体をなしている方もいらっしゃいますが、多くは自由を強調するあまり努力を怠り目先の案件を受け入れてしまいがち。
軽貨物の場合は荷物が用意されているのが当たり前みたいな働き方ですが、その前に仕事を吟味するのが当たり前にならないから「作業主」となってしまう。
Amazon配達員がユニオンを結成して抗議活動をしていますけど、仕事を始める前に内容を吟味しないから劣悪な労働環境の「作業員」として承知していると取られても仕方がない部分はある。
確かにAmazonのやり方にも問題はあるが、「事業主」として取り組み方を考えていないドライバーの方もいかがなものか?

事業主と作業主の違いってこういうことだろ?
「個人事業主」と「個人作業主」。
たった1文字の違いでも中身には雲泥の違いがある。
自分でコントロールできる「事業」と他人にコントロールされる「作業」。
脱サラしてやろうとしていたのはどちらだか明白でしょう。
「事業」は後に残るが「作業」は後に残らない。
ビジネスかアルバイトかの違いのようでもある。
フリーランスではあっても「事業主」としての個性・考え方を忘れずに行動をしていけば、その他大勢の奴隷労働の世界にいつの間にか染まっていることはないでしょう。