システマティックリスク・アンシステマティックリスク
米国株に投資している方々にとっては心落ち着かないゴールデンウィークになっているのではないでしょうか?
日本の株式市場はカレンダー通りにほぼ休場(5月2日と6日は開場)となっており、株価に大騒ぎするような変動は見られませんでした。
しかし米国ではこの1週間の間にFOMCやパウエル議長の発言、雇用統計等の金融市場に影響を与える経済イベントが目白押しで、株価も大きく揺さぶられました。
経済イベントの結果については、素人目にみればさほど大きなマイナス要素はなかったようにも思えましたが、それでも株価は過剰に反応し数十年ぶりとも言える下落幅を記録。
のんびり旅行など楽しんでいた投資者の方々も、冷や水を浴びせられたような心境ではなかったのではないでしょうか。
投資の世界でよく使われる言葉に「システマティックリスク」と「アンシステマティックリスク」というものがあります。
専門的な解説を読むと非常に難しい表現など出てきます。
投資をしている人間にとっては何となく意味はわかるのですが、投資に興味のない人にはなかなか伝わらないかもしれません。
大雑把に嚙み砕いて言うと、「システマティックリスク」とはその世界全体に影響を与える事象によって受けるリスク。
例えば現在の金融市場においてはコロナウィルスやロシアの軍事侵攻、原油等の資源高騰など。
不意に襲われ、瞬時に解決せず個々の対応ではどうにもならないような状況というのは、相当に厄介ですね。
影響が長引くことでリスクの度合いも増していくのですが、見通しが不透明なため長期的な戦略を誤ると大きなダメージを被ることになる。
もう一つの「アンシステマティックリスク」とは、「個別リスク」「非システマティックリスク」とも呼ばれ、その世界における部分的・一部的な事象によるリスク。
企業の倒産、不祥事、画期的新製品の発表など(リスクとは変化であり必ずしもマイナス要因のことばかりではない)。
最近ではメタ・プラットフォームズ(旧Facebook)やAmazonの決算発表において、市場予測を下回る数字が出された途端にそれぞれの株価は大暴落したような事例がわかりやすい。
メタやAmazonの個別株に集中投資している者にとってはリスクとなりました。
投資の世界では「卵は一つのカゴに盛るな」という有名な格言があります。
投資先は偏らずに分散することでリスクを減らせるという、至極真っ当な考え方です。
分散投資していればどこかが不調でも他のどこかでカバーできる可能性があるということ。
ただしこれは「個別リスク」において通用することであり、システマテックリスクのような状況では全ての卵を守ることは難しい。
投資の世界においての「システマティックリスク」と「アンシステマティックリスク」について簡単に解説してみましたが、これは投資以外の世界にも当てはまりそうです。
例えば私が属する軽貨物運送業においての「システマティックリスク」と「アンシステマティックリスク」はどんなものだろう?
まず軽貨物のジャンルは運送業です。
運送業におけるリスクにはどんなものがあるかを再確認しましょう。
肉体労働報酬なのでケガ・病気はヤバいです。特に委託のような働き方は完全出来高制なので、休めば収入に直結します。
運転仕事なので事故はヤバいです。物損なら自腹、人身なら運転免許を失い職を失うことになる。収入減などという生易しいペナルティではなく人生詰んでしまいます。
永遠の人手不足というロールプレイ業界により一人当たりの労働負担が半端ない。
歪んだビジネスモデルのため労働対価は他の業界より著しく低い。労働時間もしかり。
個人事業主の場合、経費負担が他の働き方に比べて異常に大きい。
車両維持費、駐車場、車両保険、ガソリン、税金、社会保険・・・
30万円稼いでも10万円以上が経費で飛んでいくような世界です。
普通にフルタイムでアルバイトでもやっていた方がいいのでは?と思えてしまいますね。
時間や収入を自分でコントロールできれば良い働き方になるのですが、せっかく脱サラしたのに社畜のように時間と配達ノルマに追われている人が大勢います。
では軽貨物の「システマティックリスク」と「アンシステマティックリスク」を分けてみましょう。
まず「システマティックリスク」ですが、これはガソリン代高騰に代表されますね。
ガソリン代が高騰しても配達単価は上がりません。収益は悪化するだけです。
ならばと配達数を増やして収入を増やそうとする意識しかないドライバーは、企業にいいように使われるだけ。
企業側にすればいくらガソリンが高くなってもドライバーが勝手に走り回ってくれるので痛くも痒くもない。むしろ低賃金で使い勝手の良い奴隷というだけ。
労働者にとっては悪いリスクであるが企業にとってはリスクにもなっていない。
そこを理解するべきです。
税や保険も仕組みや支払額が変わるリスクは労働者からは何も出来ない。
そういう「システマティックリスク」があることだけ理解しておきましょう。
一方で「アンシステマティックリスク」には何があるかというと
請負先の倒産、契約内容の変更(単価引き下げやノルマ増等)、荷量の変化、担当ルート変更など。
これらは業界のリスクとは一部被っても、基本的には別個の部分。
自分にとってリスクでも他のドライバーが同じようなリスクに晒されているわけではない。
自分の生活・収入を一つの仕事・収入・働き方に依存していれば、リスクが大きいということはわかりやすいですね。
「システマティックリスク」は避けられないが「アンシステマティックリスク」は避けられるかも。
税や保険等の関係者全てに影響するものはどんな仕事をしていても受け入れなければならないリスクですが、個別リスクは文字通り自己責任的な要素があり、回避の仕方はありそうです。
極端に言えば「もっと違う仕事・働き方をすればいいじゃん!」ということ。
働く環境を変えればリスクも変えられるなら、あとは自分次第。
それがわかっていて変われないなら、今のリスクを受け入れているということ。
私はリスク分散型人間なので卵は一つのカゴに盛っていません。
複業という働き方で労働時間も収入も分散していますが、結果的には一般的な会社員より多い収入と少ない労働時間を手に入れています。
いろいろ選択肢が多い時代なのに考え方が凝り固まっていてはもったいない。
せっかくの人生なのですからいろいろチャレンジしてみてはいかがでしょうか?